ゾンビ映画童貞を引きずり込むための傑作ゾンビ映画12本

「ゾンビ」というジャンルは一般化した。が…

(以下、「まずはこの3作品」まで飛ばしてもらっても大丈夫です)
ゾンビが好きだ。見たゾンビ映画の本数もまだまだ少ないゾンビ初心者ではあるが、ゾンビを観ると妙に心がときめく。荒木飛呂彦が『荒木飛呂彦奇妙なホラー映画論』の中で「ゾンビには一種の癒し効果がある」みたいな事を言っていたと思うのだが、全く同意見である。*1

そんなゾンビ映画であるが、ここ数年割とブームになっている。
というより、ブームを経過して「ゾンビ」というジャンルがより多くの人に認知されるようになったという感じだろうか。

ハイスクールオブザデッド、アイアムアヒーロー、さんかれあ、りびんぐでっど!、ゾンビ取りガール、Z、女ンビ等々…
正統派から萌え系非モテ系まで、数多くのゾンビ漫画が登場した。

映画「ゾンビランド」が興業成績1億ドルを超える大成功を収め、アメコミを原作としたドラマ「ウォーキングデッド」は現在まで続く人気シリーズとなった。
そしてしょーもないものからなかなか見られるものまで、今も数多くのゾンビ映画が作られ続けている(大抵しょーもない)。

「バイオのパクリかよwww」

おかげで、ゾンビそのものに親しみを持つ人は増えた。ゲテモノジャンル的な扱いはされない。
が、意外な事にゾンビゲームや漫画は知っていてもゾンビ映画は見たことが無い、ゾンビ映画童貞が結構いるのだ。
アニメや漫画にゾンビが登場すれば未だに「バイオのパクリかよwww」とコメントされたり、主人公がショッピングモールに行けば「デッドライジングのパロか」と言われたり。
節子、それ元祖ちゃう!オマージュや!と言いたくなるような場面に出くわす。*2

ゾンビ映画に限らずこの手の「時間経過によって元祖が勘違いされる現象」はありがちなもので、自分自身きっと色々勘違いしている。
が、やっぱりファンとしてはそれちゃうねん、と言いたくなるものであり、
あのな、こういうのがあってな…といらぬお節介を焼きたくなるものである。

という事で前置きが長くなったが、ゾンビ初心者による、ゾンビ初心者のための入口を考えてみた。

まずはこの3作品

ゾンビ

いいから黙って見ろ。ゾンビ=ショッピングモールの元ネタ。いろんなものの元凶。見ないと死ぬ。

ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE [DVD]

※3バージョンあるが、最初は無難に「米国劇場公開版」がおすすめ。

ドーン・オブ・ザデッド
高校生のときなんとなく応募したこれの試写会にあたったのが、ゾンビとのファーストコンタクトだった。「ゾンビが襲ってくる上に噛まれれば自分もゾンビになる」というどう足掻いても絶望な世界観に始めて触れ、緩急の激しい展開に興奮し、
観終わった後1週間は「今自分の居る世界でゾンビが発生したら」という妄想に浸っていた。思春期の影響はデカい。

ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット [DVD]


ゾンビランド

ゾンビが蔓延る前から社会からはみだしていた4人による、青春ロードムービーの要素を持ったゾンビ映画
コメディあり、アクションありの、多分一番人に勧めやすいゾンビ映画。私の母にも好評だった。トゥインキー食べたい。

ゾンビランド [DVD]

男なら黙ってロメロ三部作だろクソが、と言われそうだがちょっと待ってほしい。
2010年代に生きる相手に、最初からロメロ三部作を見せつけて分かってもらえるのか。
「ゾンビ」の面白さは分かってもらいやすいと思うのだが、ナイトオブ~とえじきはどうだろう…と少し不安になってしまう(個人的にはもちろん大好きだ)

それよりも、タイプの違う作品3つを見てもらい、間口を広げるのはどうだろうか。
そして、3作品の中で一つでもハマった作品があれば、それに合わせてこちらの作品もおすすめしたい。


「ゾンビ」にハマった人へ 正統派3作品

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
今あるゾンビ映画のベースを作りあげたジョージ・A・ロメロ監督の通称ロメロ三部作、第一作目。ゾンビ映画は自分にとって「癒し」だが、この映画は唯一純粋に「怖い」と感じた。

一軒家という閉鎖空間の中追いつめられていく恐怖、変貌していく登場人物、皮肉の利いたラスト。ホラー映画らしい怖さがつまった一作。モノクロ映画だが、それが却ってゴア描写の生々しさを際立たせている。
これを始めとしたロメロのゾンビ映画は社会的背景を下敷きに描かれており、それを調べてみるのも面白い。*3

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド [Blu-ray]

死霊のえじき
ロメロ三部作三作目。先程あげた「ゾンビ」が二作目。ゾンビ映画の華、「密室内での仲間割れ」が思う存分堪能できる。ローガン博士の実験により知性を獲得したゾンビ、バブの存在感が凄まじい。
これ以降、「ダイアリーオブ~」を除いてロメロゾンビは知性を獲得していく。
「えじき」→「ランドオブザデッド」→「サバイバルオブザデッド」と発表順に沿って見るのも面白いが、サバイバルは「ロメロが好き」でないと厳しいかもしれない。
サバイバルは「ゾンビを主張を伝えるための道具にしか使っていない」との声もあるが、ランドのラストを見るに「ゾンビ愛故にエネミーとしてのゾンビを描けなくなってしまったんじゃないか?」と個人的に思ったりする。
だからランド後はいまいちなんじゃないか…と。

死霊のえじき [Blu-ray]

サンゲリア
ゾンビらしいゾンビをめいっぱい味わえる。ストーリーなんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのです。
リバイバル上映を見て、ドッドッドッドッというリズムに合わせてゾンビがゆっくり起き上がるシーンで何故か感動して泣いてしまった。
サメVSゾンビ(&おっぱい丸出しのねーちゃん)の迷シーンも有名。

サンゲリア 製作35周年記念HDリマスター究極版 [Blu-ray]

 

「ドーン・オブ・ザデッド」へハマった人へ スリル溢れる3作品

28日後
めちゃくちゃ走るよ!静と動のバランスが好き。

28日後...(特別編) [DVD]

ランド・オブ・ザ・デッド

ここに入れるべきかどうか迷ったが、キャラが立っておりエンタメ度が高く、後味も良い、という事でいまどきなティーンにも薦め易いロメロゾンビとして入れてみた。

ちなみにロメロのゾンビ映画は全て同一世界での出来事であり、作中時系列でいうとこれが最後にあたる。そこで出ている結論があのラストか…と思うと非常に感慨深い。

ランド・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット [DVD]

REC

走るよ!密室だよ!POVだよ!

スマイルBEST REC/レック [DVD]

 

ゾンビランド」にハマった人へ コメディ系3作品

ショーン・オブ・ザ・デッド
ゾンビとコメディの相性の良さを見せ付けた作品。やたらとゾンビ映画の主人公にダメ男が多いのもこの映画の影響(かもしれない)。
クイーンの「Don't stop me now」のイメージを一変させる、あまりにも酷い使い方は必見。
「意外と真面目にゾンビ映画してる」との定評もあり、やたらとツタヤにプッシュされているのもあり、割と幅広い層に愛されているゾンビ映画

ショーン・オブ・ザ・デッド [DVD]

ゾンビヘッズ 死にぞこないの青い春
体はゾンビ、心は人間な「半ゾンビ」となった主人公によるゾンビ視点コメディ。
ゾンビとして人間に追われつつも、同じく「半ゾンビ」のろくでなしと一緒に恋人のもとを目指す。が、会えたとしても自分はゾンビな訳で…
ちょっとした切なさもありつつ、気軽に見られる楽しい一作。完全にゾンビでありながら主人公になつく「チーズ」のキャラクターがかわいい。

ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春 [DVD]

ロンドンゾンビ紀行
今時のろのろ歩くゾンビなんてスリルが足りない?なら逃げる方の足を遅くすればいいじゃない。というコロンブスの卵的発想のゾンビ映画
老人ホームに襲い来るゾンビに、武装した入居者たちは勇敢に立ち向かう。ゾンビに向けて容赦なく銃器をぶっぱなす爺ちゃん婆ちゃんが超クール。
「歩行器で逃げるおじいちゃんVSそれを追いかけて歩くゾンビ」はショーンの「Don't stop me now」に並ぶコメディ系ゾンビ屈指の名シーン。

ロンドンゾンビ紀行 [DVD]

 

 

ということで、以上12作品をチョイスした。
もちろんこれ以外にも面白いものは数多くあり、どれを入れるかは非常に迷ったが、とりあえずの「入口」としてこれらを選んでみた。
ゾンビ映画童貞の貴方やゾンビ映画童貞が身近に居る貴方の、参考になれば幸いである。

 

オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)

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ゾンビ映画大事典 (映画秘宝COLLECTION)

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*1:手元にないのでうろ覚え。孫引きになるので引用は避けるが、探してみたところこちらのブログに該当部の引用があった 
http://ameblo.jp/kashiyoshi0584/entry-11306190815.html

*2: 最近だとニコ生で見た「スペースダンディ」4話でこの手のコメントが見られた。
ちなみにこの4話、主人公が読んでいるのが「ゾンビ映画大事典」だったりと小ネタ満載。この話だけで見ても面白いのでゾンビ好きは是非。

*3:ただナイトオブ~に関しては「そのつもりは無かったけど見た人が色々解釈してくれたんだ。それでホラーにも社会的なメッセージを乗せられると気付いたのさ」みたいな事を言っていた気がするのだがソースが思い出せない。誰か知ってる人いたら教えてください…